ベストフレンド~本当の友達~
月曜日。

朝のホームルームが終わった後、岩井先生に呼ばれた。

「桑野、委員会にまだ入ってなかっただろ?」

「委員会、ですか?」

「ああ、全員どこかしらの委員会に入って仕事をするのが決まりでな。今、図書委員が空いてるんだが、そこでもいいか? 仕事は主に、図書室の本の貸し借りの管理だ」

「はあ……いいですけど」

それほど大変そうではないし、断るのも心苦しい。

それに、本なら好きだ。

「そうか。なら良かった。委員会は基本的に、各クラス男女一組なんだ。男子の方は野部だ。席も隣だし、ちょうどいいだろ。後のことは、野部か図書委員会の顧問の先生に聞いてくれ」

岩井先生は急いでるのか、返事も聞かずに行ってしまった。

とりあえず、野部君に図書委員になったことを伝えよう。

席に戻り、隣で勉強している野部君に話しかける。

「野部君」

「ん、何?」

「今、岩井先生に言われて、図書委員になったんだ」

「そっか、よろしくね。委員会の集まりは月1回で、図書室での仕事は週2回昼休みにあるよ。早速今日仕事だから、後で教えるよ」

「うん、ありがとう」

野部君は真面目だし、こちらの負担だけが大きくなったり、仕事を押し付けられたりすることもないだろう。




昼休みになった。

「桜、部室行こう」

友里に誘われる。

「ごめん、今日は無理なの」

図書委員の仕事があると、事情を説明し断った。

お弁当を食べた後、野部君と共に図書室へ向かう。



図書室に着いた。

初めて入る場所だ。

少し埃っぽく、片付いていない。

あまり掃除を熱心にしていないのかもしれない。

本棚がジャンルごとに分類されているのは、どこの学校も同じだろう。

この図書室に限った特色はないと思う。

図書室のドアの横には、カウンターがある。

カウンターの中に入って、椅子に座る。

野部君は貸し借りの管理をする時に使う機械の操作方法を丁寧に教えてくれた。

やり方は一通り理解した。

だけど……生徒が来ない。

この学校の生徒は、あまり図書室を利用しないのだろうか。

「土日はどこか出掛けた?」

あまりにも暇なので、野部君が気を遣って話しかけてくれた。

「土曜日は友里と公園に行ったんだ」

「へえ……。何したの?」

鬼ごっこして、シャボン玉して、おにぎり食べて、昼寝して。

正直に言ったら、笑われるだろうか?

だけど、嘘や誤魔化しはやめた。

楽しかったんだから、本当のことを言おう。

「鬼ごっこして、シャボン玉して、その後お昼におにぎり食べて、昼寝したんだ」

私は恥ずかしがらずに、はっきりと言った。

「あはは、小さい子供みたいだね」

やっぱり笑われた。

恥ずかしいな。

「でも、楽しそうだね。楽しかった?」

「うん」

「なら良かった」

友里が泣きながら寝ていたことは黙っておいた。

「そういえば、桑野さんも友里のこと下の名前で呼ぶようになったね」

「うん」

「良かったよ、仲良くなったみたいで」

本当に良かったと思う。

あの時、職員室の前で友里に出会えて、本当に良かった。

もし、あの出会いがなければ、きっと私は暗いままだった。

「桑野さんも本とか読むの?」

「うん、野部くんも?」

「読むよ。まあ、テニスで忙しくて、最近はあんまり読めてないけど」

「何読むの?」

「小説が主かな。ジャンルは何でも。面白そうなら読むよ」

それなら、話が合うかもしれない。

その後、野部君と小説について話した。

あれを読んだ、どうだった。

あれは良かった、つまらなかった。

趣味の話を人とするのは、久しぶりだった。

人と話すのは楽しい。

「野部君の土日はどうだった?」

「ずっと、テニスかな」

やはり、テニスが好きなのだろう。

昼休みの終わりを告げるチャイムがもうすぐ鳴る。

「そろそろ、教室に帰ろうか」

「うん」

私たちは教室に戻った。

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