ベストフレンド~本当の友達~
近所のスポーツ用品店に着いた。

このスポーツ用品店は割と大きな店で、メジャースポーツの道具ならある程度揃っているので、テニス用品もあるだろう。

時間が中途半端なので、客はまばらだ。

一応、制服の学生の姿もある。

私がキョロキョロとテニス用品を探していると。

「こっちだよ」

友里が先導する。

何度か来たことがあるのだろう。

迷っている様子はなく、一直線だ。

テニスのコーナーに着くと、ラケットがずらりと並んでいた。

どれを選べばいいか、全然わからない。

友里を見る。

「重さは軽めで……フェイスは大きめ……それに……あとは……」

友里はいくつかラケットを手に取り、ブツブツ独り言を呟いている。

とりあえず、任せることにした。

15分くらい掛けて、友里は一つのラケットを選んでくれた。

「握ってみて」

私はラケットを握る。

「太すぎたり、細すぎたりしない?」

そう言われても、よくわからない。

「わからないけど、いいと思うよ」

「そっか。まあ、そうだよね。うん、いいんじゃないかな」

値段を見る。

所持金の半分ほどだ。

まだ靴も買わないといけないので、あまり高くなくてよかった。

靴の方は割とすぐに決まり、会計を済ませ店を出た。

「これで、桜もテニスデビューだね」

「うん」

正直なところ、スポーツは苦手なので不安しかない。

他のみんながすごく上手で、私が足引っ張ったらどうしよう。

いじめられていた頃の体育や体育祭の嫌な記憶が、思い起こされる。

「そういえば、大会とか出るの?」

もし出るのであれば、真剣に練習する必要がある。

「出ないつもりだけど、出たい?」

「ううん」

「じゃあ、出ないよ」

大会に出ないのに部として認められてるあたり、ウチの高校は結構緩いのかもしれない。

というより、出る出ないを決めるのは顧問の先生じゃないのだろうか。

そもそも、4人だけで大会とか出られるのだろうか。

「それじゃあ、また明日ね」

友里は手を振る。

「うん」

私は夕食の買い物のため、スーパーに向かった。




夕食の時間、珍しく叔母さんが話しかけてきた。

「どこに買い物に行ってきたの?」

私はスポーツ用品店の名を言った。

「そう、何か買ったの?」

「テニスのラケットを」

「そう……」

それだけ言って、叔母さんは食事に戻った。



太郎の散歩を終え、風呂に入り自分の部屋に戻る。

テニス部の練習に関しては、不安と期待が入り混じる。

あまり厳しくないことを祈る。

そういえば、まだ一度も顧問の先生に会っていない。

それどころか、入部届けも出していない。

入部届けの用紙を提出する場合は、入りたい部活の顧問の先生とクラスの担任の先生の印がいる。

明日、顧問の先生が来ればいいのだけれど。

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