ベストフレンド~本当の友達~
電車は目的の駅に着いた。

そこから、5分ほど歩き大型商業施設に着いた。

ゴールデンウィークなので、人でごった返している。

人混みが苦手な人なら、気分を悪くしそうなほどだ。

私は東京に住んでいたので、それほど苦手ではない。

この商業施設は衣料品が主に売っている。

もちろん、他の店も多数入っているので、服に興味がない人でも楽しめる。

「まずは、どこ行く?」

会田さんがみんなに聞く。

「せっかくだし、服を見ようよ」

友里がそう言ったので、服屋に入ることになった。



服屋に入るなり、友里は私の手を取ってどこかに連れていく。

「友里、スカート買いなよ。絶対似合うって」

私はあまりスカートを持っていない。

なぜなら、足をあまり出したくないからだ。

自信がないのだ。

いじめられていた頃は、身体的なことや容姿も馬鹿にされたことがよくあった。

「い、いいよ。別に」

私はなんとか断ろうとする。

「これとかどう?」

友里は聞いておらず、丈の短いスカートを持ってくる。

「短すぎるよ」

「じゃあ、ロングスカートにする?」

会田さんと小村さんが追い付く。

「友里、勝手にどっか行かないでよ」

「そうですよ、友里先輩」

「ごめんごめん。ねえ桜、とりあえず試着だけもしてみれば?」

「友里、桑野さんの服探してたの?」

「うん、そうだよ」

その後、友里に言われ様々な服を試着させられた。

人から服について意見を言われることはあまりないので、新鮮な体験だった。

結局、買うことはなかったけれど、色々言ってもらって、ファッションに興味が湧いた。

ファッション雑誌の1冊でも買おうかな、と思った。

服屋を出る。

「次、どこ行く?」

友里が言った。

「私、楽譜が見たいんだけど」

会田さんがそんなことを言った。

会田さんが楽器をできるとは思わなかった。

機会があったら、演奏を聞いてみたい。

「会田さん、何の楽器弾くの?」

「ピアノ。家にあるの。昔習ってたんだけど、今もたまに弾くから」

「すごいね」

「いや、下手だよ、私。気が向いたときしか弾かないから」

家にピアノがあるなんて、結構お金持ちなのかもしれない。

私は楽器はできないので、憧れる。

私は昔、ピアノを習いたいと親にねだったけど、断られた記憶がある。

理由は弾けると格好いいという理由だった。

私たちは楽器屋に向かった。



楽器屋は教本から実際の楽器まで、色々な物が売っている。

到着すると会田さんはすぐに楽譜のコーナーへ向かった。

私達は特に目的のものはないので、ぶらぶらと見て回る。

電子ピアノがメインで、他の楽器はあまり売っていないようだ。

すると、友里が置いてある電子ピアノを弾き始めた。

といっても、メロディーになっておらず不協和音だ。

「友里先輩、弾けないなら触らないでくださいよ」

「えー、いいじゃん」

友里が聞くに堪えない音を奏でていると、会田さんが戻ってきた。

「美羽先輩、友里先輩の代わりに何か弾いてください」

「私も聞きたい」

私と小村さんが頼んだ。

「え、恥ずかしいな」

会田さんはそう言いつつ、電子ピアノの前に立つ。

聞いたことがあるクラシックの曲が奏でられる。

指は綺麗によどみなく動いており、まるで魔法のようだ。

私にはとても無理だ。

やっぱり、習っておけばよかったかな。

会田さんは弾き終わった。

「やっぱ、美羽はすごいね」

友里が褒める。

「そうかな、練習すれば誰でもできるよ」

会田さんの頬はわずかに染まっていた。


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