ベストフレンド~本当の友達~
夕食後。

部屋に戻った私たちは風呂を済ませ、パジャマに着替えた後、佳織に電話する。

スピーカー機能で、部屋の全員に聞こえるようにする。

「もしもし、佳織?」

友里が話し始める。

「友里先輩、そっちはどうですか?」

「うん、楽しんでるよ」

「良かったです」

「佳織、寂しがってない?」

美羽が聞いた。

「少しは寂しいですけど、友里先輩にからかわれそうなので、寂しくないってことにしておきます」

「からかわないよ!」

友里が抗議した。

「佳織、お寺は楽しかった?」

私が聞いた。

「座禅させられました。全然楽しくないですよ。これなら、授業してた方がマシでした。それに、なんか棒みたいので叩かれました」

不満げな様子が声色から伝わってくる。

「沖縄はどうですか?」

「うん、今日はひめゆり資料館と平和祈念公園に行ったんだ」

友里が答えた。

「佳織、ひめゆり資料館で友里が活躍したんだよ」

私はあのことを伝えようとした。

「い、いいよ、桜。言わなくて」

「え、何ですか? 活躍って」

「みんなが騒いでたから、友里が大きな声で注意したんだよ」

「さ、桜ぁ……」

友里は照れて赤くなっている。

「へえ、友里先輩、すごいじゃないですか。見直しましたよ」

「す、すごくないよ。別に」

「何照れてるんですか。友里先輩」

佳織の声色から、ニヤニヤしている表情が伝わってきそうだ。

その後も佳織と話をした。

「それじゃあ、明日は授業なのでそろそろ切りますよ。友里先輩」

「うん、じゃあねー」

友里は電話を切った。

「さて、桜、憲一君に電話する? この時間なら家にいると思うよ」

友里はニヤニヤしながら、聞いてくる。

さっきの反撃のつもりだろうか。

「い、いいよ別に」

「え、どういうこと?」

美羽が食いついてきた。

「えっとね、桜と憲一君はね……」

「違うから! そういうのじゃないから!」

友里がいらないことを言い出しそうなのを必死に阻止する。

「えー! ふふ、そうなんだ」

美羽も友里と同じように、笑みを浮かべる。

美羽はクールだと思ってたけれど、こういう話題が好きなんだ。

「では、ここで話題カードを」

友里は自分の荷物から、懐かしの話題カードを取り出す。

「話題はこれ」

友里は勝手に話題を決めた。

カードには「好きな人」と書かれている。

直接的すぎると思う。

「桜からね」

友里は私に振る。

2人は期待の眼差しを向けてくる。

「だから、野部くんのことは別に……」

なんとも思ってない訳じゃないけれど、好きとは違う。

「好きか嫌いかで言うと?」

友里は意地悪な聞き方をしてくる。

「そりゃあ、好きだけど。でも、恋愛の好きとは違うよ。憧れとか尊敬だよ」

なんとか回避できただろうか。

「そういうのが、恋愛の好きに変わっていくんだよ」

友里は自信満々といった感じで言った。

「どういう部分に憧れてるの?」

今度は美羽が聞いてくる。

「うーん、やっぱり夢を持っていて、それに向かってひたむきに努力しているところかな」

「へー、そういうところが好きなんだー」

美羽が嬉しそうに言った。

美羽も友里と同じく、どうしてもそういう風に持っていきたいらしい。

「だから……」

これは、いくら否定しても無駄なんじゃないかと思う。

「もういい、明日も早いから先寝るね」

私はベッドに行き、布団を被った。

「あらら、寝ちゃった」

友里が残念そうに言った。

「まあ、いいじゃん。これ以上追及するのはかわいそうだよ」

美羽がそう言って、2人もベッドに入った。




翌朝。

目覚ましのアラームが鳴る。

私たちは目を覚ます。

寝ぼけていたため、一瞬ここがどこなのかわからなくなった。

窓から一望できる綺麗な海を見て完全に目が覚め、現在地が沖縄だと思い出した。

天気は昨日と同じく快晴。

良い一日になるだろう。

朝食をとるために、着替えてからホテルの食事会場へ向かう。




到着すると、既に多くの生徒が着席していた。

私達も自分の班の席に着く。

先生から今日の予定と注意事項が伝えられ、朝食を取り始める。

今日は班別行動だ。

いじめられていた時は、置いて行かれてしまった記憶がある。

私が勝手にはぐれてしまったことにされ、先生に怒られた。

そんな嫌な記憶を振り払い、朝食を取った。



朝食の時間も終わり、いよいよ班別行動の時間だ。

先生から再度、注意の伝達を受けて出発する。

私たちの班もホテルを出て歩き出す。

「よーし、自由だー!」

友里が大声を上げる。

「どこに行ってもいいっていう訳じゃないからね」

美羽が冷静にツッコむ。

「もっとテンション上げていこうよ。ほら、神崎君と坂上君も」

名指しされた男子2人は困ったような笑みを浮かべている。

「友里、まずはどこに行くか覚えてる?」

私が聞く。

「えっと……村!」

正解といえば正解だけど、その答えはあんまりだ。

私たちが最初に向かうのは、琉球村だ。

「へい、タクシー!」

友里がタクシーを拾う。

目的地を告げると、タクシーは動き出す。

5人で1台には乗れないので、男女で2台に分かれる。

「君たち、修学旅行?」

運転手さんに聞かれる。

「はい、そうです!」

友里は知らない人が相手でも、物怖じせずにどんどん答えられるので、すごいと思う。

「そうか、いいねえ。琉球村の後の予定は?」

「琉球村を見学した後は、国際通りでお昼食べて、首里城へ行きます」

再び友里が答えた。

「楽しんでってくれよ。いい旅になることを祈ってるよ」

その後、長い時間ではなかったけど、運転中ずっと楽しく話をした。


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