ベストフレンド~本当の友達~
お店の外壁に、ちんすこうと大きく赤い字で書いてあるのですぐに見つかった。

店内入ると、ちんすこうだけでなく様々なお菓子がショーケースに入っている。

花のようなカラフルなお菓子もあり、見ているだけで楽しい。

「色々あるんだね」

美羽が言った。

坂上君と神崎君は部活の仲間に買っていた。

「友里は何買う?」

私はショーケースを楽しそうに見つめている友里に聞いた。

「佳織にちんすこう20個くらい食べさせようよ」

「多すぎるって。両親には何買ってくの?」

すると、友里は笑顔を引っ込めた。

「両親には買ってかないよ」

「え?」

思わず、耳を疑った。

修学旅行と言えば、普通は両親にお土産を買っていくものだ。

「どうして?」

「私、両親嫌いなの」

友里の口から、そんな言葉が出てくるとは思わなかった。

両親が嫌いというのは思春期ならまあ、あることだと思うけど、それをわざわざ口に出したりするものだろうか。

何より、優しい友里が両親を嫌っているという事実が、信じられなかった。

もしかして、虐待とかされているのだろうか。

その割には、体に傷跡などはない。

単に仲が悪いのだろうか。

「どうしたの?」

逆に友里に聞かれてしまった。

私は上手に返事できず、口ごもってしまった。

「みんながみんな、両親と上手くやってるわけじゃないよ」

友里はそんなことを言って、私に背を向けた。

もうこの件で話すことはないのだろう。

少し、悲しくて残念な気分になる。

私も親とは上手くやっている方ではないけれど、それでもわざわざ嫌いだと口に出したりはしない。

私は結局、何も買わなかった。



私たちはちんすこうのお店を出る。

次に向かうのは首里城だ。

「へい、タクシー!」

友里はタクシーを拾う。

なんだか、友里は毎回言ってる気がする。

私たちはタクシーに乗り込んだ。



首里城に着いた。

国際通りからはそれほど離れていなかったので、割とすぐに着いた。

首里城でやはり目を引くのは、赤だ。

赤い建物が並んでいる。

私たちはいくつもの門をくぐり、首里城の中心のエリアへ入った。

歴史の重みを感じさせる、荘厳な建物が姿を現す。

建物内部では、様々な展示が行われている。

中には息を飲むような美しいものもある。

他にも見て回り、ここで実際に政務が行われていたことが実感できた。

そして、施設内にあるお土産屋に寄る。

今日お土産を買えるのはここが最後だ。

店内をぐるぐると巡り、どれを買おうか迷う。

迷ったのち、お守りと黒糖のお菓子を買った。

どれを誰にあげるかは、決めずに買った。

私たちは首里城を出る。

今日行く場所はこれで全て終わりだ。

後はホテルに帰るのみとなった。

「なんか寂しいね、これで終わりかー」

友里が呟いた。

まだまだ沖縄には魅力的なスポットがたくさんある。

修学旅行で、その全てを回ることはできない。

だけど、また来ればいい。

女子テニス部のメンバーで来たい。

自然にそう思えた。

私たちは首里城を後にした。



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