ベストフレンド~本当の友達~
みんな疲れただろうけど、きっと心地いい疲れだ。

楽しいことをしていて疲れたのだから。

友里はそのまま寝てしまった。

「可愛いね」

美羽がすやすやと寝ている友里を見て言った。

「うん」

「寝顔、写真撮って佳織に送ろうよ」

「え~、いいのかな」

「いいって」

美羽はスマホを取り出す。

美羽が友里の寝顔を写真に収めようとした時、友里は泣き出した。

「すっ……ぐすっ……。ごめんなさい……」

美羽は驚いて固まっている。

「友里、時々泣きながら寝てるんだよ。前、公園で一緒に遊んだ時もそうだったんだ」

「そうなんだ……。何か怖い夢でも見てるのかな? 起こしてあげる?」

「うん」

私は友里を揺り起こす。

「友里、友里」

友里はゆっくりと、目を覚ます。

「あれ……。私泣いてた?」

「うん」

美羽が答えた。

「また怖い夢見たのかな? 覚えてないや」

友里は笑って誤魔化す。

ただの怖い夢じゃない。

そう直感が告げていたけれど、私と美羽は聞くことはできなかった。




夕食の後、部屋でくつろいでいると。

「ねえ、海行こうよ!」

友里が突然言い出した。

この修学旅行中に、海に入る機会はない。

魅力的な提案だけれど、許可なくホテルの外へ出ることは禁じられている。

「私は行かないよ」

美羽は断って、テレビに視線を戻した。

「えー。桜は? 行くよね?」

「どうしようかな……」

「きっと、楽しいよ」

「うーん」

正直、行きたい。

だけど、決まりは決まりだ。

でもなあ。

夜の海なんて機会、これを逃したら行くことはないだろう。

しかも、沖縄の海。

綺麗だろうなあ。

迷った挙句、行くことにした。

「ふふふ、桜も悪い子だね」

友里は笑みを浮かべた。

「友里が誘ったんでしょ」

「頼むから、先生には捕まらないでよ」

美羽が言った。

私たちは部屋を出た。




先生の巡回ルートや、配置場所は友里が知っているらしく、それを避けてホテルの外へ向かう。

「なんか、ゲームみたいだね」

友里は楽しんでいるようだ。

私は見つかるかもしれない緊張で、楽しむ余裕はなかった。



ホテルの外へ出る。

砂浜はすぐそこだ。

「走ろう!」

友里が走り出したので、それに合わせて私も走る。

「海だー!」

友里が叫ぶ。

先生に聞こえるんじゃないかと、ひやひやする。

夜の海は真っ黒で、吸い込まれそうだ。

そして、真っ黒な海の上に月がぽつりと浮かんでいて、夜の海を照らしている。

「海だね……」

友里が呟いた。

「うん」

波打ち際まで歩く。

波は静かに押しては返す。

私たちは靴を脱いで足を浸す。

刺すような冷たさが足に伝わる。

波の満ち引きは、いつまでも絶えることなく続く。

「なんか、映画みたいだね」

友里はぽつりと言った。

その言葉が、とても印象的だった。

友里が私の手を握る。

ほのかな体温と、柔らかい感触が伝わってくる。

「このまま、海に沈みたいね」

友里の口から、また印象的な言葉が出た。

「どうして?」

「なんか、今が一番楽しくて、素敵だから」

なんだか、わかる気がする。

このまま、楽しい時を閉じ込めたい。

「帰ろっか」

「うん」

名残惜しいけど、私たちは海から引き上げる。




「お帰り」

美羽に迎えられる。

「海、良かったよ」

友里が静かに言った。

「良かったじゃん。私も行けば良かったかな」

美羽はテレビに視線を戻す。

「さて、今日は夜更かしするよー!」

友里が唐突に言った。

「話題カード、沢山作ってあるからね」

友里は10枚ほどのカードを取り出す。

3人で楽しく話をしたりして、夜は更けていった。


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