ベストフレンド~本当の友達~
夕食を済ませ、部屋に戻る。
2人でベッドに座り雑談をしていると、唐突に友里が真面目な顔つきになった。
「それでさ……桜は憲一君のこと、好きなの?」
またその話か。
少し、うんざりする。
「だから、何度も違うって言ってるじゃん」
「そっか……」
友里はふざけている様子はなく、神妙な面持ちだ。
いつもと違う。
「じゃあ、寝よう」
友里は布団を被って寝てしまった。
何だったのだろう。
友里なら「夜更かしするぞー」とか言いそうだけど。
まあ、いいか。
明日のことも友里なりに、考えているのだろう。
私もベッドに入り、眠りに落ちた。
翌朝。
天気は快晴。
今日も暑くなるだろう。
ホテルで朝食をしっかり取り、試合会場へ向かう。
30分ほど歩くと、会場が見えてきた。
試合前だけど会場内には既に多く人が集まっており、練習などが行われている。
野部君の試合するコートの周りには沢山の人がいて、ウチの学校の男子テニス部も大勢来ている。
ちょうど、野部君もコートに入るところだった。
「野部く……」
「桜」
私は声を掛けようとしたが、友里に止められた。
「どうしたの? 友里」
「緊張してると思うから、声かけるのはやめたほうがいいよ」
そういうものなのか。
野部君のことは友里の方が知っていると思うので、素直に従うことにした。
いよいよ、試合が始まる。
野部君の試合をテレビではなく、実際に見るのは初めてだ。
野部君のサーブから始まる。
打つ態勢に入ると応援が止み、しん……と静かになる。
ボールを投げ上げ、サーブを打った。
速い。
相手のコートに入る。
レシーブが返ってくる。
レシーブの球の着地点は浅い。
そのまま、野部君は鋭いストロークを放つ。
決まった。
あっという間の出来事だった。
歓声が上がる。
すごい。
すごいよ、野部君。
これが、野部君が人生を掛けてきた集大成なんだ。
「憲一君はね、テニスになるとすごく攻撃的なんだよ。普段はあんなに大人しいのにね」
友里が教えてくれた。
その目はどこか遠くを見つめているようだった。
野部君のプレースタイルは友里の言うように、攻撃的。
というより、超攻撃的。
とにかくラインギリギリに打つ、強く速く打つ、返す時もとにかく速く強く返す。
それに、勝つためには何でもやる。
ドロップもロブも精度が高く、効果的な場面で選択でき、ポイントを積み重ねることができる。
おそらく、格下相手ならあっという間に試合が終わらせるようなタイプだろう。
だけど、今戦っている試合は全日本ジュニアの準決勝。
簡単に勝たせてくれる相手ではない。
相手のサーブ。
コースをつく、強烈なファーストサーブだ。
野部君は食らいつく。
なんとか返る。
そのままストローク戦にもつれ込む。
相手がタイミングを計りドロップで返す。
ネット際に落ちる。
野部君は全速力で走る。
しかし、2度バウンドする前にたどり着けなかった。
相手のポイントだ。
「クソッ!」
野部君の声が響く。
同時に、相手の応援の歓声が響いた。
野部君が乱暴な言葉を使うのにも驚いたけれど、何より表情に引き込まれた。
ゾクゾクする。
これが、本気で戦っている男の人の表情なんだ。
野部君は汗を滝のように流している。
苦しいと思う。
暑くて疲れていると思う。
でも、その極限状態の先に、野部君の求めるものがある。
だから、こうして全力で戦っている。
必死にボールに食らいついている。
2人でベッドに座り雑談をしていると、唐突に友里が真面目な顔つきになった。
「それでさ……桜は憲一君のこと、好きなの?」
またその話か。
少し、うんざりする。
「だから、何度も違うって言ってるじゃん」
「そっか……」
友里はふざけている様子はなく、神妙な面持ちだ。
いつもと違う。
「じゃあ、寝よう」
友里は布団を被って寝てしまった。
何だったのだろう。
友里なら「夜更かしするぞー」とか言いそうだけど。
まあ、いいか。
明日のことも友里なりに、考えているのだろう。
私もベッドに入り、眠りに落ちた。
翌朝。
天気は快晴。
今日も暑くなるだろう。
ホテルで朝食をしっかり取り、試合会場へ向かう。
30分ほど歩くと、会場が見えてきた。
試合前だけど会場内には既に多く人が集まっており、練習などが行われている。
野部君の試合するコートの周りには沢山の人がいて、ウチの学校の男子テニス部も大勢来ている。
ちょうど、野部君もコートに入るところだった。
「野部く……」
「桜」
私は声を掛けようとしたが、友里に止められた。
「どうしたの? 友里」
「緊張してると思うから、声かけるのはやめたほうがいいよ」
そういうものなのか。
野部君のことは友里の方が知っていると思うので、素直に従うことにした。
いよいよ、試合が始まる。
野部君の試合をテレビではなく、実際に見るのは初めてだ。
野部君のサーブから始まる。
打つ態勢に入ると応援が止み、しん……と静かになる。
ボールを投げ上げ、サーブを打った。
速い。
相手のコートに入る。
レシーブが返ってくる。
レシーブの球の着地点は浅い。
そのまま、野部君は鋭いストロークを放つ。
決まった。
あっという間の出来事だった。
歓声が上がる。
すごい。
すごいよ、野部君。
これが、野部君が人生を掛けてきた集大成なんだ。
「憲一君はね、テニスになるとすごく攻撃的なんだよ。普段はあんなに大人しいのにね」
友里が教えてくれた。
その目はどこか遠くを見つめているようだった。
野部君のプレースタイルは友里の言うように、攻撃的。
というより、超攻撃的。
とにかくラインギリギリに打つ、強く速く打つ、返す時もとにかく速く強く返す。
それに、勝つためには何でもやる。
ドロップもロブも精度が高く、効果的な場面で選択でき、ポイントを積み重ねることができる。
おそらく、格下相手ならあっという間に試合が終わらせるようなタイプだろう。
だけど、今戦っている試合は全日本ジュニアの準決勝。
簡単に勝たせてくれる相手ではない。
相手のサーブ。
コースをつく、強烈なファーストサーブだ。
野部君は食らいつく。
なんとか返る。
そのままストローク戦にもつれ込む。
相手がタイミングを計りドロップで返す。
ネット際に落ちる。
野部君は全速力で走る。
しかし、2度バウンドする前にたどり着けなかった。
相手のポイントだ。
「クソッ!」
野部君の声が響く。
同時に、相手の応援の歓声が響いた。
野部君が乱暴な言葉を使うのにも驚いたけれど、何より表情に引き込まれた。
ゾクゾクする。
これが、本気で戦っている男の人の表情なんだ。
野部君は汗を滝のように流している。
苦しいと思う。
暑くて疲れていると思う。
でも、その極限状態の先に、野部君の求めるものがある。
だから、こうして全力で戦っている。
必死にボールに食らいついている。