ベストフレンド~本当の友達~
自分の家に戻る。

そうめんを茹でて、叔母さんと一緒に食べる。

食べていると、夏祭りの話題になった。

「夏祭り、桜は行くの?」

「はい、行く予定です。友達と一緒に」

4人になることを今は祈る。

「そう……浴衣があるから着ていくといいわ」

「ありがとうございます。あと、叔母さん」

「何?」

「私をこの家に住まわせてくださって、本当にありがとうございます」

叔母さんがこの家に住まわせてくれなかったら、友里たちと同じ高校には行けなかった。

今の友達との関係があるのは、叔母さんのおかげでもある。

「何? 改まって。……本当に、変わったわね」

「はい」

私はうなずいた。

「いじめられて学校変えるなんて聞いてたから、最初は私もいろいろ複雑だったのよ。かわいそうって気持ちもあったし、自分の暮らしを邪魔されたくないって気持ちもあったの」

私は叔母さんの気持ちを考えたことはあまりなかったけど、最近は考えるようになった。

叔母さんにも生活があるのに、転がり込んできてさぞかし迷惑だっただろう。

それでも、受け入れてくれた。

私は自分のことだけ考えて、叔母さんの小言に腹を立てたりしていたんだ。

今は違う。

だから、感謝の気持ちを言葉にした。

「桜は明るくなったわね。いい友達がいるのかしら?」

「はい!」

いじめは人の気持ちを考えられない人間がする行為だ。

いじめられて傷つかない人間はいない。

私は人の痛みがわかる人間になりたい。

そして、友里のように人にいい影響を与えられる人間になりたい。



これから、太郎の散歩だ。

「行くよ、太郎」

太郎が嬉しそうに飛び跳ねる。

いつもの散歩コースを歩いていると、、いつも通り野部君に出くわした。

「桑野さん、こんばんは」

「こんばんは、野部君」

そのまま、一緒に歩き出す。

「実はね、準決勝の後友里に足を怪我してること、見破られてたんだ」

「そうだったの?」

「うん、さすがだよね。それで、友里に止められたんだ、決勝の試合に出るのを」

「それでも、出たんだ」

「今にして思えば、軽率だった。だけど、友里との約束があったからね。優勝したら付き合ってほしいっていう。僕には……友里しかいないんだ。友里がいじめられてた時、僕は助けてあげられなかった。だから、今度こそは守ってあげたい。友里にはたくさん助けてもらったから。今の僕があるのは友里のおかげなんだ」

べた惚れだ。

なんだ、私が付け入る隙なんて、最初からなかったのか。

幼馴染って、ずるい。

勝てっこないよ。

でも、友里ならいいや。

「桑野さん?」

私はきっと、変な顔をしていたんだろう。

野部君が心配そうに見てくる。

「何でもないよ。頑張ってね、野部君」

「うん、ありがとう。おやすみ、桑野さん」

「おやすみなさい」

野部君は去って行った。

初恋、だったのかな。

今日は泣かない。

部室でたくさん泣いたから。

ありがとう、野部君。

絶対、プロになってよ。

友里と幸せになってよ。


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