ベストフレンド~本当の友達~

女子テニス部の部室はテニスコートの脇にあるそうだ。

コートでは男子テニス部が昼連をしている最中だった。

「おっしゃー! 来いやー!」

「ナイッサーブ!」

男子の低い大きな声が、コート中に響いている。

テニスコートについては詳しくないが、かなり綺麗に整備されていると思う。

それに、照明もあるので夜も練習しているのだろうか。

「桑野さん、入って入って」

女子テニス部の看板のある、部室に入る。

部室の広さは教室の半分くらいだ。

中にはラケットやボールの入ったかご、コートを綺麗にするためと思われるブラシが雑然と置かれている。

夏に涼むためだと思われる扇風機もある。

あと、机と椅子が4つ。

そして女子が2人いた。

1年生と2年生が1人ずつだ。

1年生の子はお下げの髪で、2年生の子はショートカットだ。

この学校では、学年を判断する際は制服のリボンの色で識別する。

「あれ、友里先輩。誰ですか?」

「もしかして、新入部員?」

2人に言われ、私は困ってしまう。

もう、逃げられない所まで追い詰められているのではないか。

「そう、新入部員だよ! 桑野桜さん」

浜岡さんは困っている私を尻目に、紹介を始める。

「ま、待って。まだ……」

私は必死に止めようとする。

「友里~、その子嫌がってない?」

「え? そうなの?」

浜岡さんは私を見る。

「そうですよ、友里先輩。桑野先輩、もしかしてまだ入ると決めてないんじゃないですか?」

私はうなずく。

「ご、ごめんね桑野さん」

浜岡さんは謝る。

「まあ、せっかく来てもらったんだし、説明だけでも聞いてもらえば?」

2年の子が提案した。

「じゃ、自己紹介から。私は2年の会田美羽」

「私は1年の小村佳織と言います」

「私はもう知ってると思うけど、浜岡友里。これが、今の女子テニス部のメンバーだよ」

「え?」
 
思わず、声が出てしまった。

3人だけ。

テニスは少人数でやるスポーツだけど、それだけでいいのだろうか。

もし、ダブルスで対戦するなら1人足りない。

ちらりと、部室の窓から男子テニス部を見る。

ざっと見て20人以上が昼連に参加している。

「あ、男子と比べちゃだめだよ」

浜岡さんが言った。

「そうそう、桑野さんは知らないかもしれないけど、男子テニス部は全国大会行くくらい強いのよ」

会田さんが言った。

なるほど、だから照明設備まであるのか。

そういえば、男子テニス部のトロフィーが職員室の近くにあったような。

「私達女子テニス部は、ガチでやってる男子と違って、同好会みたいなものなんですよ」

小村さんが言った。

「話が逸れちゃったね。さ、桑野さん、自己紹介して」

浜岡さんに促さる。

「く、桑野桜です。2年です……」

消えそうな声が出た。
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