長谷川君には屈しないっ!
こうして勝手に長谷川君の格好を分析していると、周囲の女子たちが痺れを切らしてこっちに向かって来た。
「…面倒だな。地味子、ちょっと走るぞ」
そう言うと彼は勢いよく走り出し、女の子たちの輪をくぐり抜けていった。
…私の手を引きながら。
「うぇ…っ!?ちょっ…!」
しかし、いきなりの引力に対し私の鈍りに鈍りまくった運動神経では必死にその足を動かすことしかできない。
「その短い脚死ぬ気で動かせ」
「これ以上む、無理…っ!」
大通りの人混みの中を男の方は悠々と走りながら、女の方はジタバタと必死に走るという光景はさぞ異様なことだったろう。
こうして、公衆の場で醜態を晒しながら走っていると、長谷川君の走る速度が落ちた。
今まで全速力で走っていた私は、それに合わせて止まる……ことはできず。
長谷川君に正面から突っ込んでしまった。
「ちょっ……!」
幸い、走って逃げて来た場所は人通りが少なく、私が発した奇妙な声も多くの人に聞かれずに済んだ。
しかし、ぶつかった衝撃で痛む鼻を手でさするが、じわりじわりと痛みが押し寄せてくる。
うぅ…、痛い。
「前のやつが止まったら普通突っ込まないだろ」
「…っ。私にそんな瞬発力が備わっているとでも!?」