長谷川君には屈しないっ!
勢いで反論するが、彼にそんな主張が通じるわけもない。
とは言ったものの、不覚にも少し動揺していることにはあえて気づかないふりをした。
そして、火照ったままの頬を落ち着かせながら、長谷川君への反撃は諦めた。
「絶対、ね」
私が壁際から離れた後、彼がそう呟いたのも知らずに。
その後はというもの、今日はクラスで文化祭に準備に必要な物を買い出さなければならないため、そのために私を呼んだという要件を唐突に知らされた。
近くのホームセンターやら雑貨屋さんやらを自由奔放な彼に振り回されながらあっちこっちと駆け回った。
全ての物が揃う頃には夕方になっていた。
私はといと、疲労のあまり近くにあった公園に寄り、そこのベンチでぐったりしていた。
「……死ぬ」
両手に抱えていた袋をどさっとベンチにおろして一気に脱力した私は、目の前に突っ立っている私をこの状態に追い込んだ張本人に視線を移す。
「なんでそんな疲れてんの」
そんな呑気なことを言う彼に対し、言葉を返す気力もなく、一応睨んでおく。
長谷川君のおかげで、ただでさえあっちこっちへ行っていたのに、まわりの女性陣からの視線がグサグサきた。
注目される側の人にはわからないだろうけど!
自分で言っておいて虚しくなってきたのを感じ、視線を足元へ下ろす。
「……」
すると、彼は何を言うわけでもなく、ふらふらとどこかへ行ってしまった。
長谷川君のことだからどうせ少ししたら戻ってくるよね。
そう思い、夕日に照らされながらしばしぼーっとする。
「…疲れた」
ポロリとでたその言葉はオレンジ色に染まった空気に吸収される。
今日は特に女性陣からの視線が痛すぎて、こっちまでビクビクしてしまった。
そりゃあの顔で街中を歩いていたら注目されるよね。
隣の私なんか『誰こいつ』って見られてたし。