長谷川君には屈しないっ!

そう意気込んだ私は自分の低身長を活かし、人混みの中でも比較的スペースのある足元に突進した。


何度も迫り来る膝蹴りを食らったり、時には回避しながらやっとの事で群の中間まで来た時だった。


「「「きゃーーーっ!!!」」」


叫びにも似たかん高い声が、頭上から聞こえてきた。


「ぐふ…っ」


その言葉とともに群の中の圧力は一層にまし、押しつぶされそうになる。


く、苦しい…っ。


なんなのよいきなり!?


いきなりのことに、イラつきながらも必死に体をよじらせ、人ごみの出口を目指して突き進む。


そしてようやく、髪も制服も心もボロボロになったが、教室に足を踏み入れることに成功した。


やっとのことで普段の息継ぎができるようになり、崩れてしまった洋服を直そうとした時だった。


人ごみの先頭付近にいた女子生徒たちの視線が、無理くり群のから出てきた私へと向く。


恐ろしいほどの眼力で睨まれたが、今回ばかりは睨み返してやろうと思った。


毎回毎回、あんたたちの良いようにさせてたまるもんか!


と、意気込んだ私……………だったが、


「なに、この小ちゃいの」


「え、くそ地味じゃん」


「あんたがいると、よく見えないんだけど?」


ドカッ。


へっ……?


その言葉と共に訪れたのは私の睨みに恐縮した態度ではなく、足で蹴られた衝撃であった。


それにより体勢を崩した私は、反射的に片足を踏み出した。


しかし、その足は片方の足を他の足に絡めてしまうという痛恨のミス。


体勢はさらに崩れ、たった今プールの飛び込みから飛び出したような状態に。


「うわぁ……!?」


女子らしさを微塵も感じさせない声を吐く私。


まるでスローになったかのように体が床へと近ずいていく。


「俺らちょっと、4組言ってくるわー。ほら、早く来いよ!」


「は?なんで他のクラス行くんだよ」


「まぁまぁ、減るもんじゃないしさ。なっ?」


そう言って、ある男子が男子生徒を他クラスへと連れ出そうとする。


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