長谷川君には屈しないっ!
そういって走っていった逆の方向に足を向ける。


少しの間、周辺をふらふらしていると、見覚えのある人物を見つけた。


「何してんの?」


声の先には、いつも通りおさげ頭をした地味子がいた。


「…!!」


一瞬目線が交わったあと、地味子は俺を無視して反対方向へと早歩きで歩きだした。


「何で無視すんの?」


「ひ、人違いかと…」


早歩きのスピードに合わせながら地味子を追いかける。


「は?お前地味子じゃん」


「私の名前は地味子じゃありません!!」


なんだこのくだり。


あぁ、そういうことか。


こいつの行動の理由がわかった俺は、地味子の前に回り込み、進路をふさぐ。


「…っ!」


すると地味子は顔を下に向けた。


「何で顔上げないの?」


からかうようにそう言うと、瞬く間に地味子の耳が赤くなった。


「顔上げろ」


「……拒否します!///」


「はははっ。そうきたか」


勢いよく発せられた言葉が地味子らしくて思わず吹き出す俺。


こいつなりに必死に抵抗したつもりだったんだろう。

「悪いな。お前に拒否権ないから」


グイッ。


地味子の顎を持ち上げ、こっちを向かせる。


ふいを突かれたせいか、地味子は素直に顔を上げた。


少し潤み、戸惑いを含んだ目が俺を捉える。


頬を赤らめながら、数秒の沈黙のあと地味子はすぐさま自分の瞼をぎゅっと閉じた。

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