長谷川君には屈しないっ!
体育館の裏にある用具倉庫だけだ。


よく見ると、入口のドアが少し空いていた。


小走りで倉庫に近寄り、中に入る。


倉庫の中は薄暗く、少しホコリっぽい。


そして地味子を探してみると、体育用のクッションにもたれるようにして座っている。


「地味子」


声をかけるがやはり地味子は座ったまま、返事はない。


側に寄ってにると、地味子が返事をしなかった理由が分かった。


「まじかよ…」


ポツリと出た言葉とは裏腹に、地味子からは規則正しい寝息が聞こえてきた。


よくよくみると、地味子の手にはまだ携帯が握られていた。


俺の電話中に寝落ちしたってことか。


思わず、俺は深いため息をついた。


「…なんで、こういう時に限って抜けてんだか」


そうして目線を地味子の顔の方へ向ける。


すると、地味子の目元にはクマができていた。


そのクマを見て昼間の会話を思い出した。


きっと、こいつのことだから他のクラスのやつにこじつけてやらされたんだろうけど。


そういうのわかってて断らないのも地味子らしいと言えばらしいか。


…にしても、


俺がこれだけ側で声をかけても一向に起きる気配がない。


「…運ぶか」


このままここにいたって仕方ないか。


とりあえず、地味子を保健室に連れて行こう。


そう思い、地味子の背中と膝の下に腕を回す。
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