長谷川君には屈しないっ!
その後
文化祭から数日たって、クラスも落ち着いてきた頃。
山々の景色は、茶色や赤に変わり、肌寒くなってきた。
私は教室で勉強しようと思い、少し早く登校路を歩いていた。
文化祭が終わったあともなにかと委員会の活動が多くて、なかなか勉強に本腰を入れられなかったが、今日からなんとか取り組めそうだ。
校門をくぐって歩いていくと、体育館が見えてきた。
カバンを持つ手に気合いを入れて歩いていると、突然背後から誰かに肩を叩かれた。
その勢いで出そうになった悲鳴をとっさに口で塞ぎ、後ろに振り向く。
「よ!地味子!」
「…!」
そこには、いつもの制服ではなく、ジャージ姿の藤木君の姿が。
まだ7時なのにこのテンション…。
元気だな…。
こんなに元気ハツラツに地味子って言われると、抵抗する気さえも失せてくる。
「おはようございます」
「勉強?」
「もちろんです。藤木君は部活ですか?」
「まぁそんなとこ」
あんまり話したことはなかったけど、普通に会話ができるのは藤木君の性格だからなんだろうな。
そういえば、長谷川君と藤木君は同じ部活だったような…。
「あ、今光輝のこと考えてたでしょ」
「そんなことは…」
「だって地味子、あいつのこと考えるときすげぇ眉間にシワよってるし」
そう言いながら藤木君は指でおでこを寄せている。
私、そんな顔してた?
「そ、そんなことないです!」
「いやほんとほんと!こんなだから!」
再び自分のおでこ寄せる姿に、まるで本当に自分があんな顔をしているような気がしてきて、気恥ずかしさを感じる。
「はははっ。…まぁでも今日あいつ寝坊したらしいから来ないよ」
その言葉を聞き安堵したような気持ちになる。
来てないのか…、
よかった。
と、一息ついていると遠くから誰かを呼ぶ声がした。
「藤木先輩!」