長谷川君には屈しないっ!
友達
熱気の立ち込める体育館に響く声。
マネージャーになって(しまって)から早くも2週間が経ち、
たどたどしくはありながらも、何とかやってきていた。
「休憩!」
「「はい」」
その合図とともにスタンバイしていたボトルやタオルを、部員の人たちに渡していく。
「誰かボトルくれー」
「これどうぞ。あ、タオルもあるのでぜひ」
「おぉ、さんきゅ」
「先輩!ドリンクどうぞ〜」
「ありがとう」
そつなく先輩方にタボトルとタオルを渡していく佐々木さんに対し、
私は…、
「上地さんドリンクちょうだい」
「あ、はいっ。どうぞ」
「地味子俺もー」
「俺のタオルある?」
「た、ただいまお持ちいたします!」
要領の悪さが前面に出て、佐々木さんのようにはなかなか身をこなせない。
それでも何とか頭と体をフル回転させ、仕事をこなしていた。
そんな日の練習終わり。
部員の人たちが着替えを済ませている間に、私と佐々木さんは体育館の戸締まりをしていた。
モップがけと道具の整理に分担し、倉庫でボールやビブスの確認をしていると、
準備を終えた何人かの部員がやってきた。
「佐々木先輩!俺代わります!」
「そんな、みんなに悪いよ」
「じゃあ俺ら体力まだ余ってるんで、一緒に手伝うっす!」
「ほんと?じゃあお願いしちゃおうかな?」
佐々木さんはそう言うと穏やかな笑みを浮かべた。
「…」
美人な人が言うと、本当に絵になるなぁ…。
そんな様子を感心しながら用具倉庫から見ていた。
そうこうしていると入口からまた誰かが入ってきた。
「風間君!お疲れ様」
「お疲れ様です」
「お、廉も来たな!廉もモップがけしようぜー」
佐々木さんの前で足を止めた風間君が、みんなと何か話している。
佐々木さんの方はみんながいるから大丈夫そう。
「ボール数えなきゃ」
そんなことより、自分の仕事を終わらせないと…。
そして倉庫の中へと再び体の向きを変え、ボールの数を確認する。