長谷川君には屈しないっ!

「長谷川君も読みますか?本」


「廉と話してたやつだろ?」


「はい」


「いや、いい」

少し考える素振りを見せたあと長谷川君は私頭にデコピンすると、歩く速度を早めた。


「行くぞ」













そして、


翌日の今日は、練習試合を兼ねた校内合宿の初日。


校内合宿が終わる週末には大会があり、大会が終わるとすぐに定期テストもある。


目の前では他県から来た数校のバスケ部との白熱した試合が繰り広げられ、私たちも忙しく動いていた。


参加した高校と総当たり戦で行われる試合は、肉体的にも精神的にもかなり堪える内容だ。


そんな中マネージャーは昼食の準備をし始めたところだった。


要領の良い佐々木さんに体育館での仕事をお任せし、他校のマネージャーさんと具材を仕込む。


しかし、私はと言うと


「こっちの学校のバスケ部顔面偏差値高くな
いですか!?」


「え?」


「みなさん彼女とかいるんですか!?」


「えっと…」


かなり積極的な他校のマネージャーさんに質問攻めにあっていた。


「特に4番と10番の人!」


4番と10番って、長谷川君と風間君のことだ。


「4番の人なんて、一見クールそうな感じだけど、他に人には見せない顔を自分だけに見してくれたりしてくれたらもう最っ高!」


ひとりテンションが突っ走っている他校のマネージャーさんこと飯島さんの話を何となく受け流していたが、ふと長谷川君の話題になり、思わず耳が傾いた。


「他の人には見せない顔とは具体的にどういう…」


「例えば上地さんだけに優しい表情をするとか、他の人にはしないようなことを自分にはしてくれる、みたいな!」


「他の人には見せないってどんな…」


「それはねぇ、いつか自分がそういう体験をした時に分かるものなの!!」












「「「お疲れ様したーっ」」」


怒涛の1日目を終え、私たちはちょうど夕飯の片付け終えたところだ。


「そろそろ私たちも行く?」


「そうですね」


他校のマネージャーが出て行ったあと、佐々木さんと通路に出ると窓からの景色はすっかり藍色に染まっていた。


「ねぇ、上地さん」


「はい?」


ふと佐々木さんに話しかけられた。


「上地さんってさ、長谷川君と仲良いよね」
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