長谷川君には屈しないっ!
「え」
「文化祭委員も一緒だったし、マネージャーも長谷川君がきっかけでしょ?」
「そうですけど…どうしてですか?」
「上地さんって長谷川君のこと好きなのかな〜って」
「っな、そんなことは断じて…!」
それ以上でも以下でもない。
…はずなんだ。
「そうなの?私てっきり長谷川君のこと好きだと思ってた!」
「…っ」
「でも好きじゃないんでしょ?」
「……」
「私ね、長谷川君が好きなの」
静まり返った校舎内に響いたその言葉は、空気に消えていくとともに私の中へ染み込んでいった。
言葉は最初異物のなものに感じられた。
しかし、思考が働くたびそれは馴染んでいく。
「どうしてそのことを、私に?」
動揺している自分がわからない。
佐々木さんなら長谷川君と並んだって遜色ないんだから、好きなことだって全然不思議じゃないのに、
「だって私たち友達でしょ?」
「…」
初めて言われた言葉だった。
物心がついた時から、周りの人々と関わりを持つのが苦手だった私には友達と呼べるような人はいなかった。
そんな私を、佐々木さんは友達と呼んでくれている。
「私友達なんて言われたの初めてで、なんて言ったらいいのか…」
マネージャーをやっていなかったら、佐々木さんとの接点なんてきっとなかったはずだ。
容姿端麗で気品があって、みんなの注目の的である佐々木さん。
「でも、嬉しいです。そう言ってもらえて」
「私も上地さんと仲良くなれて嬉しいな。友達なんだから何でも私に言ってね?」
「いいんですか?」
「だって友達だよ?そういう関係でしょ?私も困った時は上地さんにお願いしてもいいかな」
「…はい。もちろんです」
ただ嬉しかった。
自分にも友達と呼べる存在ができたことに。
「だから、上地さんも私のこと応援してくれるよね?」
「…え」
にこやかな表情を浮かべる彼女。
私たちは友達で、
佐々木さんは私を頼ってくれている。
友達なら、応援するのが当然?
応援しなかったら?
この関係は終わってしまうの…?
私は佐々木さんを裏切るの…?
「ね、上地さん?」
「…はい」