長谷川君には屈しないっ!
私の右の方から声がして、再び驚いた私だったが、一番驚いたのはそれが長谷川君だったことだ。


そして、長谷川君が言葉と同時に出した物は、紛れもなくさっきまで私が書いていたプリントだ。


「そ、それです…」


うぅ…。


色々反論したのに、寝てしまった私に落ち度があるのは一目瞭然。


なにも言い返せない…。


「あ…」


「あ?」


「あ…、ありがとう」


言ったはいいものの、最後の方はかなり小さくなってしまった。


「ん。これで、貸しいちな」


「な……っ」


紙をひらひらさせながそう言う彼は勝ち誇ったような顔でそう言った。


くやしい…っ。


「ていうか、早くそのプリント提出しにかねーと、先生帰っちまうんじゃねえの?」


「……!」


そうだった!


長谷川君の発言により、担任がいつも6時を過ぎると颯爽と帰ってしまうということを思い出した。


慌てて教室の時計を見ると、5時58分。


ここは3階の西側で、職員室は1階の東側にある。


そう、思考回路が回ってきた頃には私の顔からは血の気が引いていく。


「あ、あなた職員室まで持って行きなさいよ!」


「はぁ?やだよ」


「バスケ部なら足もお速いことでしょーに!」


パニック状態に陥っている私に対し、彼は右手の親指を立て、こう言った。


「頑張れ、帰宅部」

こいつーーー‼︎‼︎
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