長谷川君には屈しないっ!
***


「あっははははは」


「いつまで笑ってるのよ!」


恋愛漫画では王道の夕焼けをバックに男女が家路を歩いている姿をこれっぽっちも感じさせない雰囲気を放ちながら並んで歩く私と長谷川君。


あの後。


結局、私が死にものぐるいで学校を駆け巡り、担任が自分の席を立とうとする寸前、職員室に私が突進し、無事提出できたのだった。


方向が同じということもあり(このことは今知ったのだが)、一緒に帰ることになった。


「あの必死な顔は面白かったな」


もう過去の話というのに、それをぶり返して今も笑っている長谷川君。


「あのねぇ!私は運動部でもなければ、得意なわけでもないっていうのに、あなたが私に行かせたからでしょ!」


「っはいはい、お疲れ帰宅部さん。まぁでも、プリント最後まで書いたのは俺だし?」


その言葉に反応してキッと長谷川君を睨むが、毎度のことながら効果はない。


このことはもう諦めよう。


実際、プリントを書いてもらったおかげで提出期限は守られたのだ。


「プリント、ありがとうございました。…でも、あなたに貸しを作るのは嫌です。だから、なんでもひとつ言うこと聞くわ」


私はまだ知らない。


この発言から始まる事が、私の高校生活を著しく変えて行くことを。


「じゃあ、今週の土曜日1時に○○駅前集合な」
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