空からの涙
・恋の瞬間
あいつに会ったのは高校の初め。

たまたまクラスが同じで、もちろん会ったことも、見たことも、話したこともない。

けど俺はそいつに恋をした。一目惚れという名の恋だ……。

一重瞼に長い髪で凄く楽しそうな表情。おとなしそうな感じ。

まだ名前も知らないあいつの事を考えている。

キョロキョロ周りを見渡すあいつは、たまに俺と目が合うと微笑みながら頭を下げてくる。

『ガラッ』

教室のドアが開く。

「おはようございます。まず入学おめでとう!1年C組の担任の桐原ッて言います。ヨロシク。」

まだ、歳も若そうな先生で、明るい。

「明日は委員会やらなんやら決めるんで特に持ち物は無しで!でわ解散」

そう言った後、クラスのほとんどが教室を後にする。

「一人で残っても…」

まだ少しざわめく教室で呟く俺。

「帰るかぁ…」

する事もなく、一人で教室を後にしようとした時、俺の名前を呼ぶ奴……

「和~!クラス同じだったな☆」

こいつは中学の時から一緒につるんでた、野山 悟。

悟はいつも明るいムードメーカー。

「俺ら、ホントに腐れ縁だからなッ」

中学の時もクラスがほとんど同じで、毎年腐れ縁だッて言ってたっけ……

「悟~…早く帰ろぉ」

教室のドアから顔を出して悟を待っているのは、五十嵐 祐芽。

悟の彼女でもある、しっかり者で面倒見が良い。お姉さんタイプ。

「すぐ行く~じゃあ和またな!」

そう言って教室を出る二人の背中を追いかけるように早々と歩く。

帰る途中もあいつの事しか考えられない俺。

「名前なんて言うんだろ」とか

「中学どこなんだろ」とか

一目惚れッて初めてだからよくわっかんねぇけど、相手の事何にも知らない、『0地点』から始まるから何か今までの恋よりも、新鮮な感じがした。

そんなことを考えるうちに家につく。

「ただいま~」

玄関を開けると、見慣れない靴が何足か…

「お帰り~今、雅の友達来てるから」

妹の雅。優しい一面もあるけど、怒ると手がつけられないほど怖い。

高校初日は特に何もなくって、ただクラスの人と制服がガラリと変わったぐらい。
< 2 / 137 >

この作品をシェア

pagetop