あの夏の日の花火
大キライな音。
ドオン!

ドオン!ドオン!


続け様に音がする。

夏の夜の風物詩。
橋の上にはたくさんの人。
浴衣姿の女の子に子供連れの親子。
彼氏の腕にしがみつくようにして寄り添い欄干に凭れるジーンズの女性。
その誰もがずっと遠くに見える空を、空を彩る花を見上げている。

私はそれらを横目に自転車をこぐ。

ドオン!

また音がするけれど、視線は向けない。

私は花火がキライ。
夜空を彩る火花がキライ。
耳を打つ低い音がキライ。

その音は、嫌でも私の嫌な思い出を蘇らせるから。



あれは五年前。

暑い、夏の夜。
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