あの夏の日の花火
そのお隣さんは一月ほど前に引っ越して今は空き部屋になっている。
反応のお隣は夜の仕事らしくて私が寝ている間に帰ってきて仕事の間に出ているようで、生活が逆転しているからほとんど気配すら感じない。

たまーに休みの日の昼に掃除機や洗濯機の音が聞こえてくるくらい。

ソファーに座ると、アキが膝の上に乗ってくる。
私はその背を撫でながら、お隣さんが引っ越していった原因を思い出して眉を寄せた。

どうしよう。

と、このところずっと頭を悩ましている問題をまた思い出す。

お隣さんが引っ越していったのは、こっそり猫を飼っていたのがバレたせいだ。

このマンションの一階は大家さんの家になっていて、その大家さんが大の猫嫌いである。
アレルギーもあるらしいからまあ仕方ないかなとも思う。

もともとペット不可のマンションだし。

アキは一週間前の仕事帰りにコンビニ横の狭い路地にダンボールに入れて捨てられているのを見つけた。
コンビニで夕飯とチューハイを買い込んで自転車に乗ろうとした時、路地の奥からナァナァとどこか切羽詰まった声が聞こえてきたのだ。
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