あの夏の日の花火
実際その時のアキは相当切羽詰まっていたことだろう。

アキが入れられていたダンボールは蓋が閉められていて、しかもその上にゴミの入ったビニール袋が乗せられていた。

アキの小さな身体では蓋は開かないし、ダンボールの中はボロボロのタオルが一枚敷いてあるだけで水も食べ物も入ってはいなかった。

あのまま誰にも気づかれずに放置されていたら最悪アキに待っていたのは餓死だったはず。


そのまま放置もできずにとりあえず部屋に連れて帰ってズルズル今日まで。

私はお隣さんと同じくこっそり猫を飼ってしまっている。

「誰か探さないとね」

優しい飼い主さんを。
アキを大事にしてくれる人。

本当は私がペット可のマンションに引っ越せればいいんだけど。

「……先立つものがないのだよ」

アキの両脇を持ち上げて目の高さを合わせて言うと、アキは私の言葉がわかるのかわからないのか元気にナオン!と声を上げた。
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