あの夏の日の花火
どうしよう。聞こえちゃう！

アキが見つかったら、きっとものすごく怒られる。
怒られるだけならともかく猫をどうにかするか出て行くかしてくれ、と言われるに違いなかった。
何故なら一月ほど前にお隣さんが言われていたのを私はそばで聞いていたのだから。

仕事帰りだった。
いつものように自転車を駐輪場に置いて階段を上っていたところに言い争う声が聞こえて。
覗くとお隣さんと大家さんが猫のことで言い合っていて。

何度か話し合いを持ったようだったけれど、結局それからすぐに引っ越していった。

「……どうしよう」

このままアキを置いて出て大家さんに鳴き声が聞こえたら？
また同じようなことがあったら？

アキは私が仕事でいない間は昼寝をしているようで、これまではいない間に煩くしているらしい気配はなかった。
まだ子供だから、それほどウロウロ棚に飛び上がったりもしない。
でも、もっと大きくなったら？

私はアキの飼い主を探さないと、と頭では思いつつもなかなか行動に移せないでいた。


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