あの夏の日の花火
私がアキに出会ったのは中学三年の秋。

アキは高校三年生で今の私からすればまだまだお子様だけれど、当時の私からすればずっと大人。
年上の男の人。


友達のお隣さんで、友達の近所のちょっとカッコイイお兄さん。  

初めてアキを見たのは友達の家にノートを届けた日。

風邪で3日も学校を休んだ友達に休み中のノートを届けるついでに借りていたCDを返すため。

--なんてのはただの言い訳で、ホントはお隣のカッコイイお兄さん目当て。

あんまりカッコイイと騒ぐから、友達の見る目を確かめてやろうじゃないかと見に行ったわけだ。

友達の部屋とアキの部屋はちょうど隣り合っている。
ドラマとか漫画とかに出てきそうな造りだ。 
二階の窓と窓が向かい合わせ。

用がある時は丸めた紙や消しゴムを窓に投げつけて呼ぶ。
声を上げて読んだ方が早いじゃないか、と私なんかは思ってしまうのだけれど。
その友達が言うにはあえてすぐ気づかない感じがいつ気づくかとワクワクするんじゃないか、だそうだ。
まあ、毎日楽しそうだこと。

私はふぅん、とか適当に相手をしながら友達の部屋でジュースを頂く。

内心は結構ドキドキ。

すっかり風邪は治った様子の友達が投げる消しゴムと、それがぶつかる音、閉じたままのカーテンを注視する。

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