あの夏の日の花火
結城敏也という男は御曹司だけれど、あまり店の格だのというものにこだわらない。
それは昔からそうで、アキと二人の時も、私を含めた時も、ごく普通の庶民的なお店をよく利用していた。
庶民の私たちに合わせているというよりも、味に納得できれば値段はどうでもいいということらしい。
一人で格安の牛丼屋にすら入る。
いかにもお金持ちオーラをまとったイケメンが吉○屋のカウンターで牛丼を食べる様はきっととんでもない違和感で目立ちまくっていたことだろうけど。

アキは車の後部座席でお留守番。
クッションがいいからか、気持ち良さそうにスヤスヤと丸まっていた。

初めてバスに乗ったりお出かけしたりして疲れたのだろう。くぴくぴと鼻を鳴らして眠っていた。

窓際の4人掛けテーブルに案内された私たちは二人でピザを一枚頼み、敏也はミートドリアと食後にエスプレッソを、私はクリームソースのスパゲティをSサイズで頼んだ。この店は女性向けに小さめサイズがあり、その分食後のデザートがしっかりお腹に入る。

私はいつもメインはスパゲティをSサイズで、デザートにチーズケーキをカフェオレとともにいただくのがこの店のお約束。
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