あの夏の日の花火
実家は兵庫県の田舎でここからだと新幹線と電車とバスを乗り継いで半日以上。

とてもしばらく実家から仕事に通うなんてことはできない。

それに、と私は唇を噛む。
相談もできない。
両親はそろそろ田舎に帰ってお見合いでもしたらどうか、と言ってきている。
ついこの間も銀行員だとかいう候補の写真を送ってきたばかり。

相談しようもなら、この機会に帰って来るようにと矢のような催促を寄越すことだろう。

私だってもう26。
そろそろ結婚だって意識しないではないし、仕事だってそれなりのやりがいはあるものの、天職だと言うほどのものでもない。
どころか運良く内定をもらえた会社にそのまま就職してズルズルお局と呼ばれるギリギリまで続けてきただけ。
まだお局呼ばわりはされていないものの、きっとそれも時間の問題。

先輩の数はどんどん減っているし、後輩だってこのところ結婚退職する数が増えている。
 
長く勤めていればそれだけ後輩の数も増えるのだから当たり前のことなんだけど。

  
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