あの夏の日の花火
俺のマンションって、つまり敏也のマンションってことよね?

いったいどうして私の居住地が敏也のマンションになるっていうのよ。

意味不明。
というかわかりたくない。


なんというか、だけど。
流れからすると私に敏也のマンションに来いって言っているように感じる。

だけどそんなのさすがにありえない。
保護者で恋人でもないただのどころか訳ありでできれば近づきたくない、そんな人のマンションに一時的にせよお世話になるなんて。

「さっきからいったい何を言ってるのよ」

棘をふんだんに含んだ声で言うと、私は自分を落ち着かせようとコーヒーを一口飲む。
ほのかな苦味が舌の上に広がって、熱が喉を通り過ぎていく。

「何って、そうだな」

敏也は自分もカップに口を付けると、意味ありげに口元を歪めてみせた。

「雇用契約を結ばないかって、話なんだけど」
「……は?」

敏也の口から飛び出した言葉に、私はポカンとしてしまう。
頭の中は、コイツ何言ってんだ。という疑問でいっぱい。

敏也はそっとカップを皿に戻すと、右手の人差し指を胸の前で立てた。


  

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