あの夏の日の花火
花火の音はキライだ。

特に打ち上げ花火のドオンと腹の底に響く重低音。
あの音がキライ。


電車で二駅先の河川敷で毎年行われる花火大会は、結構有名なもので遠方からも人が集まってくる。
地上波で生中継とまではいかないものの、ネットテレビでは中継しているチャンネルもあるんじゃないだろうか。

「天音さんは行かないの?」

コツンと私のデスクの上にカフェオレの入ったカップが置かれる。
私の背中ごしにカップを置いたのは少しばかり頭の薄くなったメタボな中年男性。
だけどいつも穏やかで部下への気配りもできる。
私の直属の上司である香山部長だ。

スマホの待ち受け画像が愛猫と3歳の娘さんというあたりも好感が持てて「男は見た目だけじゃないよね」と思わせてくれる。
実際奥さんも写メを見せてもらったことがあるが、結構な美人だった。

美女とおっさん。

でもきっと素敵な家庭なんだろうな、と少し羨ましくなる。


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