あの夏の日の花火
「私はいいです。あんまり花火好きじゃないし」

カフェオレありがとうございます。とカップをとりながら言うと香川部長はへぇ、とちょっと大袈裟に目を見張った。

「珍しいね。若い女の子は皆好きなもんだと思ってた」
「花火というより場の雰囲気が好きとかいうのも多いと思いますけどね。あと浴衣着たりおしゃれしたりしてでかけるのが好きとか」

私はその点、浴衣にもおしゃれにもあんまり興味がないからね。
一緒に行く男にも。

「それよりも次のフェアーの新商品をどうするかの方がずっと大事ですよ。私次はマジで狙っていきますから!」

むん、とカップを持っていない左手でガッツポーズをしてみせると、香川部長は「頼もしいね」と目尻を下げて笑った。

「まあ、まだ全然中身は出来てないんですけど」

部長が淹れてくれたカフェオレは自販機のものでなく給湯室で淹れてくれたものだ。
スティックタイプのものなのだけれど、私の好みはそれに少し牛乳を足す。
しっかり私好みに淹れられたカフェオレに口元が緩む。

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