大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「―――千歳くんに好きな人ができたから、俺を好きになった?」
絶望、した。
.......届かなかったんだ、なにも。
きゅう、と胸が締め付けられるように痛んで、目頭の奥が熱くなる。
まずい、と思って、急いで千尋から目をそらして、うつむいた。
暗闇が濃くなって、もういま、ここには正しい光なんてなにもないと思った。
「…ちがう」
真っ直ぐな声で否定したかったのに、私からでた声は弱々しく、悲しいくらい説得力がないものになってしまった。
「違わない」
「違う、ほんとうに、わたし、千尋がっ、」
泣きそうになりながらも、再び千尋を見上げたら、千尋は、もう、私に背中を向けていた。
千尋が着ている服のモスグリーンが夜と混じり合って、目にしみる。
ぽとり、私の目から、線香花火みたいには光らずに、涙が一粒落ちた。
届かない。
私のことなら何でも分かっていると思ってる。
でも、千尋は何も分かってない。
優しさ以外を望めば、拒まれる。
時間は進んでいるのに、ずっと私は過去にとらわれたままだと思ってる。
なんて、残酷なんだ。