大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「私のじゃないよ」
おたくのイケメン、美優が指してるのは千尋のことだろう。
「あら、そう。まあでも、付き合ってください、って言われて、ごめん無理、って当たり前みたいに断ってたよ」
「……、」
「好きな人いるんですか?って聞かれて、いないけど君のことはまったく興味ない、って」
「……」
「本当にきれいな顔して、けっこう性格悪いよね、あの人。公開告白からの公開大失恋だよ、可愛い女の子だったのに」
「……」
「それで、泣きそうなその子の横をいっさい気にかけずに素通りして、自分の教室戻ってったわよ。ちゃんと虹、教育してるの?最低よ、ほんと」
「うわ、それは最低だ、本当に」
ずずー、っと苺ミルクのパックをへこませたら、中身は空になる。
口の端にカレーをつけて、美優は、さっきの購買のことを思い出しているのか、ちょっとだけ眉をしかめた。
千尋は最低だけど、みんなの前で告白する女の子は、きっと千尋の事なんてあんまり考えてない。
そんなことを思えるのは、昔の人見知りで恥ずかしがり屋だった千尋のことを知ってるからで。
たぶん、千尋にとって放課後の下駄箱が許容ラインのぎりぎりだ。
人がたくさんいる購買での告白は、千尋にとっては、けっこう不愉快だったんだろう。