大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
隣から、カレーのいい匂いがする。
サクッと気持ちのいい音のあとに、美味しいー、なんて脳天気な美優が幸せそうに言った。
「…美優、」
「ん?どうしたの、虹」
きょとんとする美優に、私は苦しさをちょっとだけ吐き出すみたいに口を開く。
「…私、千尋のこと好きなのやめたい」
じんわりと自分の声が廊下に響いて、美優は、食べかけのカレーパンを一度おろして、優しくなぐさめるような顔で小突いてきた。
私が千尋のことを好きだということを知ってるのは、千歳くんと美優だけだ。
だから、美優は数少ない理解者で。
あのイケメンのどこがいいの?って美優はあんまり千尋のことを気に入ってないみたいだけど、私の相談にはいつもこころよくのってくれる。