大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】





せっかく久しぶりに会えることに少しわくわくしていたのに、たった今目撃していた告白未遂の現場に溜息をつきつつ、いつものようにこっそりと下駄箱の影に隠れていたら、千尋がこっちに近づいてくる。


女の子がその後ろ姿を、悲しさと怒りを含ませた顔できっと睨んだ後に、すたすたと向きを変えて戻っていったのが私からは見えて、朝比奈千尋のくそやろうは健在だ、と呆れてもはや笑いさえでてきてしまった。




「「なんだ虹いたの」って言ったら、怒るから」



私の前まで来た千尋を見上げてちょっとだけ睨んだら、「いたの知ってるよ」って千尋は私の文句をひらりと交わす。



それから、久しぶり、ってその口が動いたから、うん、って頷いた。






学校を出て、隣を歩く。


ちら、と視線を千尋にむけると、最後に会ったときとは少し雰囲気が違っていて、それに加えてさっきの女の子の言葉を思い出してはっとする。


ふわりと柔らかくゆれる髪は夏をすぎても変ってないけれど、ゆれかたがちょっと違う。




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