大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「虹?」
千尋が私をかがんでのぞきこむようにしたことで、パチリ、と目が合う。
そこで、思考回路が戻される。
そうしたら、なぜか躊躇する隙もなく、言葉がするりと外に出ていってしまった。
「…百瀬ってだれ?」
思わぬ質問だったのか、千尋は顔をきょとんとさせた。
「なに、それ気になるとこ?」
「だって、千尋が人の名前だすの珍しいから」
「そ?……あー、っていっても多分虹知らないやつだよ。クラスの女」
「…仲いいの?」
「あーまあ、ちょっと。夏休みの後半に話すようになった」
千尋が私の質問に答える度に、頭を何かで殴られているような心地に襲われる。
別にぜんぶそんなに強い衝撃ではなかった。
だけど、血がしみる代わりに徐々に、心に灰色の気持ちがしみだしていく。