大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「虹、まだ、好き?」
不意に、私の顔をのぞきこんだ千尋に驚いたものの、その顔に私を心配そうにする気配を感じたから、やっぱり千尋は心配性だ、なんて思いながら小さく笑った。
思った通りだ。
千尋は私の過去に弱いから。
「んー、どうだろう。千尋には内緒」
「……あー、そ」
不服そうにつぶやいて、私から離れた千尋は、スタスタと歩いて行ってしまった。
私は、その後ろをついて行く。
「怒った?」
「まったく」
「本当に?」
「なんで俺が怒んないといけないの」
「だって、怒ってるでしょ?」
「しつこいよ、虹」
「……だってさ、」
その態度が怒っていないっていうなら、なんなんだ。
不可解なまま千尋の隣に並ぼうとしたとき、やつが振り返って、不敵に右口角だけをあげた。
本当に怒っているわけじゃなさそうな様子に、おかしいなと思いながら目を合わせる。
すると、千尋が、意地の悪い笑みを浮かべたまま口を開いた。
「あのさ、虹」
「……なに?」
「さっきから、俺に怒っててほしいみたいに聞こえるけど、気のせい?」