大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】





「虹、まだ、好き?」


不意に、私の顔をのぞきこんだ千尋に驚いたものの、その顔に私を心配そうにする気配を感じたから、やっぱり千尋は心配性だ、なんて思いながら小さく笑った。


思った通りだ。

千尋は私の過去に弱いから。





「んー、どうだろう。千尋には内緒」

「……あー、そ」




不服そうにつぶやいて、私から離れた千尋は、スタスタと歩いて行ってしまった。


私は、その後ろをついて行く。




「怒った?」

「まったく」

「本当に?」

「なんで俺が怒んないといけないの」

「だって、怒ってるでしょ?」

「しつこいよ、虹」

「……だってさ、」




その態度が怒っていないっていうなら、なんなんだ。


不可解なまま千尋の隣に並ぼうとしたとき、やつが振り返って、不敵に右口角だけをあげた。

本当に怒っているわけじゃなさそうな様子に、おかしいなと思いながら目を合わせる。





すると、千尋が、意地の悪い笑みを浮かべたまま口を開いた。




「あのさ、虹」

「……なに?」

「さっきから、俺に怒っててほしいみたいに聞こえるけど、気のせい?」






< 13 / 433 >

この作品をシェア

pagetop