大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
千尋が私の教室に滅多に来ないのと同様で、私も千尋のところへ行くことはあんまりない。
だから教室での千尋がどんな風なのかはよく知らなくて、少し興味があったりする。
そもそも千尋が教室にいなかったらどうしよう、とすこし心配になりながら千尋の教室の廊下まで来たら、廊下側の窓から顔を出してぼーっとしている男の子がいた。
なんとなく見覚えのある顔に、ちら、と視線をあわせたら、眠たげでとろんとした瞳が私をとらえる。
そこで、ひとつの記憶がよみがえる。
前に千尋といたときにコンビニであったひとで、確か、
――水嶋くん。
そうだ、水嶋くんだ。
私は、ぺこりとなんとなく軽く頭をさげる。
彼はじーっと私を見たままでいたけれど、ふと、のんきに柔らかいあくびをして、それから口を開いた。