大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「きみ朝比奈のお気に入りの子だよな。どーも」
ぺこ、と窓から顔をだした彼が、適当なお辞儀をして、またあくびをする。
初めて会ったときもゆるい男の子だと思った気がする。
どうやら本当にそうみたい。
言われたことに首を横に振って、彼との距離を若干詰めたら、とろんとした瞳がぱちりとゆっくり瞬いた。
「お気に入りじゃないよ別に」
「そうなの?」
「うん、ちがう」
「あー、じゃあ逆かー」
「うん?」
「朝比奈が君のお気に入りなのか」
ゆるい表情はそのままで、かすかにあがった口角に、私は一瞬ドキリ、としてしまう。
返事をすることも忘れて、何を考えているのか分からないその顔をじっと見ていたら、彼は私からゆっくりと目をそらした。