大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】




「なんで、虹と水嶋?」



組み合わせが意外だったのか、微妙に眉をよせた千尋が水嶋くんに聞いて、水嶋くんはゆるく表情をつくったまま、「なんでって、別に」と適当に答える。



「今日、ちゃんとはじめて喋ったよね、枢木ちゃん」

「うん」

「人間なんだから、別にちょっと顔知ってたら喋るよなー」




なんとなく感じの悪い挑発をして、また小さくあくびをした水嶋くんに、千尋の顔にいらつきの気持ちが微かに浮かんだけれど、千尋は相手にせずに私に視線を向けた。



「で、虹、なに?」

「あ、えっと、電子辞書」

「放課後って言ってなかった?」

「そうなんだけど、次英語なのうっかり忘れちゃってて」

「あーそういうこと。分かった、持ってくる」




自分の席に戻って、引き出しの中から電子辞書をとりだして、すぐに千尋が戻ってきた。


ありがと、って私の手に辞書をのせたから、うん、って頷いたけど、なぜか横からの視線を感じて、千尋から視線をうつす。


と。




< 137 / 433 >

この作品をシェア

pagetop