大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「なんで、虹と水嶋?」
組み合わせが意外だったのか、微妙に眉をよせた千尋が水嶋くんに聞いて、水嶋くんはゆるく表情をつくったまま、「なんでって、別に」と適当に答える。
「今日、ちゃんとはじめて喋ったよね、枢木ちゃん」
「うん」
「人間なんだから、別にちょっと顔知ってたら喋るよなー」
なんとなく感じの悪い挑発をして、また小さくあくびをした水嶋くんに、千尋の顔にいらつきの気持ちが微かに浮かんだけれど、千尋は相手にせずに私に視線を向けた。
「で、虹、なに?」
「あ、えっと、電子辞書」
「放課後って言ってなかった?」
「そうなんだけど、次英語なのうっかり忘れちゃってて」
「あーそういうこと。分かった、持ってくる」
自分の席に戻って、引き出しの中から電子辞書をとりだして、すぐに千尋が戻ってきた。
ありがと、って私の手に辞書をのせたから、うん、って頷いたけど、なぜか横からの視線を感じて、千尋から視線をうつす。
と。