大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
少しかがんだ千尋と瞳を合わせたまま、
私は固まってしまう。
「……はっ、」
「嘘だよ、ばーか」
先に動いたのは千尋で。
帰り道の歩道橋に足をかけて、
登っていってしまった。
ここで立ち止まっているわけにもいかないから、千尋のくそやろう、と心の中で精一杯悪態をついて、歩道橋をのぼる。
交通量の多い道路の上を、ゆく。
夕焼けもすぎさって、街灯の光と車のヘッドライトだけが頼りなく揺らめいている。
千尋の広い背中を追う。
学ランのシルエットも背丈も、あの人とすごく似ているのに、決定的に違うのは、その後ろ姿を見る頻度だ。
すぐに私に背を向ける千尋の後ろ姿を、もう頭の中でさえ描くことができる。
私がふいに思い出す千尋はいつも、私に背を向けているから。