大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
そんな私に、
「てか、これから帰れない日あるかも、」
なんて付け加えるみたいに、歯切れの悪い口調で千尋はそう言った。
「え、」
別に、たいしたことじゃない。
毎日一緒に帰れなくても、関係がかわるわけではないし、そもそも放課後、違うひとと遊びに行かずに小学校の頃から毎日一緒に帰っていることがおかしかったのかもしれない。
そう思おうとしたけれど、最近重なっていることがぜんぶ繋がっているように思えて、うまく納得できずに唇をむすんでしまう。
信号が、青になって、千尋が歩き出そうとする。
だけど、その青がなぜか私の目の裏では点滅しているように思えてくる。
千尋の、真ん中でくるんとわけられた前髪、ツーブロックのすっきりした髪型、夏休みの後半誘いを断られたこと、はじめてきいたひとの名前。
心臓のまんなか、黒くてみにくい灰色のしずくの滴下が、もう、とまらない。