大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「虹?」
横断歩道に足を一歩前に出した千尋が、ふりむいて怪訝そうな表情をつくる。
私は、気がついたら声を出していた。
「――それって、百瀬さん?」
立ち止まったままの私に、千尋は中途半端に振り向いた状態で、ワンテンポ遅れて、うん、と頷いた。
…赤信号だ。こころの信号。
言いようのない不安に包まれている。
なんで?とかどうして?とか聞きたいのに、“怖い”ってこの前千尋が私にいった言葉がストッパーになって、そっか、って返すしかなかった。
声は掠れてしまったけれど、千尋はそんな私のことなんて気にすることなく、「てか、信号渡るよ虹、」とまた、くるりと背を向ける。