大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
私が今、何を考えているか千尋にはたぶん何も伝わっていない。
この前から、見たことがない百瀬さんの存在にどれだけ怯えているか。
第一私がその人のことを気にしていることすら千尋は分かってないだろう。
私は一度冷静になるためにゆっくりと深呼吸をして、千尋の背中を追った。
「虹、途中からなんか変なんだけど」
「……え、」
「なに、俺が明日帰れないって言ったから?」
「……、」
「別にこれからずっとじゃないって」
家の前まで着いて、私の顔をのぞきこむようにして千尋がみる。
結局、信号を渡ってからもうまくしゃべることができなくて、気の利かない相槌しかうてなかった。