大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】





「虹ー、」




自分よりも前で呼ばれた名前は、車の音に紛れて、かすかにしか聞こえなかった。

だけど、その声とともに千尋が振り向いたから、何?という意味をこめて首をかしげる。




「コンビニよりたい」



……なんだ、そんなことか。

別に、ことわりなんていれなくてもいいのにな。



千尋は、変なところで律儀なんだ。





「いいよ、何買うの?」

「アイス」





ふにゃりとした無防備な笑顔を浮かべて、すこしだけ照れ臭そうにした千尋に、これは千尋のことを気になっている女の子がみたらイチコロだろうな、とぼんやり思いながら、うなずいておいた。



千尋の大好物は、バニラのソフトクリーム。

私はあんまり好きじゃないけど、昔そういったら、頭おかしいんじゃねえの、って真顔で言われたから、千尋の中でソフトクリームのバニラ味がおいしいっていうのはどうやら常識のようだ。





歩道橋をくだりながら、
少し先にみえるコンビニをめざす。




さっきまで前を歩いていた千尋は、気が付いたら隣にいて、私のペースで歩いている。


千尋には言わないけれど、遅い速度で歩く私にあわせて、足を窮屈そうに前へだす千尋を見るのが、面白いからけっこう好きだったりする。




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