大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「じゃあ、いこう?」
諦めて水嶋くんに向かって、首をわずかにかしげたら、水嶋くんのとろんとした瞳がゆっくりと瞬きをおとして、頷いた。
どういう組み合わせ?とか、朝比奈くんは?とか、背中にこそこそとささやかれるたくさんの言葉を受けながら、居心地の悪い気持ちで教室をでる。
水嶋くんのせい、ぜんぶ。
こんなことなら、この前、千尋の教室に電子辞書を返してもらいに行くとき、目なんて合わせなければ良かった。
それに。
―――『水嶋は、だめだよ』
思い出した。
どういう意味で言ったのか分からない、千尋の言葉。
そんなことを言って私の心を少しだけかき乱したくせに、千尋はあの後も「帰れない」って連絡をしてくる日が増えて。
私は、分かった、って何も気にしてないふりをしてそれに返事をするしかなかった。