大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】





「それと、なんか気になったから」



「何が?」

「夏休みはいる直前くらいにさー、クラスの女が朝比奈のこと話してて、そん時は朝比奈も聞こえないふりしてたんだけど、なんかそのあと枢木ちゃんの話題になったんだよ、で、なに?やっかみっつーの?女子ってそこらへん怖いじゃん?」

「…うん」

「枢木ちゃんのこと結構悪く言ってて、で、それまでは知らんぷりしてたくせにさー、朝比奈がいきなり、『不愉快だからやめてくんないかな、ブス』って真顔で」

「え、」

「けっこう女に辛辣なこと言うやつだなーとは思ってたけどさ、ブスはねーじゃん?いやでも、本当に思ってたっていうより、ふつーになんかその女のこと傷つけようとして言ったみたいな。そんな怒る?ってくらい怒ってたんだよなー、まあ女が先に枢木ちゃんのこと言いだしたからどっちもどっちみたいな感じなんだけど、」

「……」

「自分のことではあんま感情ださないくせに、変だなって思って。で、ちょっと気になってくるじゃん?どんな子かなーって、枢木ちゃんのこと」





千尋が、女の子に対してブスなんて言うところ想像できない。


どんなに“くそやろう”でも、容姿について何か言うことは今まで絶対になかったし、そういうことを言う性格ではない。

無意識に人を傷つける言葉はたぶん使わない人だ。


だから、それは、本当に水嶋君が言う通り、その人のことを傷つけようとして放った言葉なんだろう。

私のこと、かばおうとしたのかもしれない。でも、やり方はちょっと軽蔑する。
でも、軽蔑するけど、そうやってかばってくれたのはうれしいって思ってしまう。



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