大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】




正直な自分の感情を隠したまま、水嶋君に「でも、だからって、水嶋君が私をねらうってどういうことなの?」と再び質問をぶつけたら、彼はまたゆるく笑って、食べかけの鮭おにぎりを一口食べた。



それから、返事を待つ私に、あれね、とその口元が動く。



「朝比奈がどんな反応すんのかなーと思って」

「………、」




思わぬ答えに、返事ができずに固まってしまう。


悪趣味だ。
たぶん感じが悪いっていうより、この人は性格が悪いんだと思う。



固まる私を気にもせずに、水嶋君は言葉を続けた。




「あの時、朝比奈、どんな顔してたと思う?」

「……」

「鳩が豆鉄砲を食ったよーな顔」

「……」



「したと思ったら、そのあと、は?って眉しかめて、かわいーよねーあいつも」





あの時、千尋のほうなんて見ることもなくチャイムの音に慌てて自分の教室に戻ったから、いま水嶋君が言っていることが本当かどうか定かじゃないけれど、本当にそうだとしても、変な期待をしてしまうのはむなしいから、嘘だと思うことにする。





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