大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「―――朝比奈のこと好きでしょ?」
言われた言葉に、私は、瞬きもできずに目の前の水嶋君を見るしかなかった。
その声が、屋上までのぼってまた跳ね返ってくるような、そういう感覚。
「え……」
ワンテンポ遅れて、かろうじて出た声は情けなく、私が何を言おうと彼には全部見透かされているように感じて、首は縦にも横にも動かすことができなくて。
そんな私に追い打ちをかけるように、水嶋君は、そっと耳元に唇をよせた。
いやらしいものではなく、秘密話を打ち明けるみたいなしぐさで。だけど、今日感じた中で一番の嫌な予感がして、ぞわり、と心臓の裏側を冷たい指でなぞられるような危ない気持ちになる。
それで、だいたい、その予感というものは、あたるのだ。