大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】






「―――朝比奈のこと好きでしょ?」





言われた言葉に、私は、瞬きもできずに目の前の水嶋君を見るしかなかった。

その声が、屋上までのぼってまた跳ね返ってくるような、そういう感覚。




「え……」



ワンテンポ遅れて、かろうじて出た声は情けなく、私が何を言おうと彼には全部見透かされているように感じて、首は縦にも横にも動かすことができなくて。




そんな私に追い打ちをかけるように、水嶋君は、そっと耳元に唇をよせた。


いやらしいものではなく、秘密話を打ち明けるみたいなしぐさで。だけど、今日感じた中で一番の嫌な予感がして、ぞわり、と心臓の裏側を冷たい指でなぞられるような危ない気持ちになる。





それで、だいたい、その予感というものは、あたるのだ。




< 162 / 433 >

この作品をシェア

pagetop