大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
それから、水嶋君は、千尋とその“百瀬”さんのことを一つずつ話してくれた。
その前に、鮭おにぎりだけ食べさせて、と焦らすみたいに、二つのおにぎりを味わって食べきるのを待たされたのは、やっぱりちょっと性格がわるいって思ったけれど。
「まず、俺と水嶋ってクラスだけじゃなくて、バイトも同じなんだけどさー、」
「え、…そうなんだ、知らなかった。だから、仲いいんだね」
「まあーうん。で、夏休みけっこうシフトかぶってて、あがりの時間とか同じだったわけね。10時くらいかな?で、帰り道も途中まで一緒なんだけどさー、俺らのバイト先の近くって結構、同じ高校のやつとかいるんだよ」
「……、」
「で、日付まではさすがに覚えてないけど、ある日ですね、一緒に帰ってたらその帰り道で、スーツのおじさんに引っ張られてどっか連れてかれそうになってる制服の女がいたわけね。めっちゃ抵抗してんのに、すげー強引でさー、しばらくどうしようか考えてたんだよ俺も。でもしばらくして、あいつ、その二人んとこいきなりいって、警察呼びましたから、って。そしたら、おじさんすぐどっか走って逃げてった」
「……」
「大丈夫?って朝比奈が声掛けたら、その女泣き出して。朝比奈は、なだめるやら慰めるやらして、まー俺はそれを突っ立ってみてたわけだけど。お互いのこと見たことあるってことくらいはあの場の全員わかってたからなー。だってクラスメイトだしな。……その女が、百瀬だよ。てか、枢木ちゃん“百瀬”のこと認知はしてんの?」
「…してないの」
「すげーきれいな女だからね、百瀬。きれい、スタイルもいい、髪もきれい」
「………」